法務の評価制度どうなっている?

社内ルール

さて新たな年度を迎えました。
サラリーマンにとってこの時期は昨年度の振り返りと今期目標を立てる時期であります。

昨年度は何ができましたか?
振り返ってみると「全然やりたいことができていなかった…」とヘコムこともあります。

より仕事に打ち込むため、モチベーションを向上させるためにも適切な人事評価は必要です。
しかし、法務は営業などと異なり定量的な評価が難しいといわれています。

そこで本日は法務の人事評価制度について思うところを綴ります。

よくある人事評価制度

目標管理制度(MBO)

多くの企業ではエクセルを使って個人目標を立て、それに対する達成度に応じて評価される目標管理制度を用いているのではないでしょうか。

メリットとしては、目標を立て結果の達成度で個人を図るので、やればやるだけ評価が高くなる=モチベーションが維持しやすい。

逆に目標設定の時点で上長とのすり合わせができていない場合、無理な目標を立てることとなり評価が必然的に下がります。
また、目標も完全自主的な設定ではないため本当にモチベーションが維持できるのかといったところもある。

行動評価制度

行動評価制度はその名の通り個人の行動を評価対象にする制度です。
行動基準としては会社の企業理念を一般的または部門特化の形に置き換えて基準とします。

例えば、「当社はコンプライアンスを重視します」とあれば、「独占禁止法や下請法違反などが生じないように現場からの聞き取りに努める」など法務的に置き換えます。

日本型雇用の場合は、新人の間部門特化ではなく一般的な基準が設けられることがあります。
例えば「部門内での情報共有ができている」など。

メリットとしては結果ではなく行動プロセスそのものを評価してもらえるので定量的な評価が向かない職種にも用いることができます。

逆に行動プロセスの評価かつ基準に企業理念が用いられていることが多いため、主観的評価に陥りがち、そもそも評価の根拠となる企業理念が絵に描いた餅である場合は評価のために記載するだけの茶番劇に陥りがちです。

【2020.4.27追記】

コロナウイルス禍において、在宅勤務する方が増え、チームや上司・部下とのかかわりがガラッと変わっています。

日頃口頭で行われていた報連相もすべて文面主体に。
ふらっと他部門がやってきて相談されることもいちいち電話や会話アプリになることで相談件数が減っているかもしれません。

このような状況では果たして行動評価することができるのか?という問題が新たに発生します。

基本的に行動評価は自己評価→1次評価(課長)→2次評価(部長)→最終決定(部門)等のプロセスを経ることから、一番身近であり評価基準になる上司から日ごろの業務が見えにくくなっています。

今までの「やっている感」が評価されなくなることは大歓迎ですが、行動軸の修正も迫られるかと。
具体的には「他部門からの依頼に真摯に対応している」などお気持ち的なものから、「他部門からの依頼に迅速に回答できている(○営業日以内)」など。

災い転じて福となす
これを機にわかりやすい評価制度にしていきましょう。

弊社の場合

上記の説明を端折って申し訳ない。
詳細はビジネスローイヤーズの以下の記事を参考にしてください。
https://www.businesslawyers.jp/articles/617

弊社の場合は目標管理制度に行動評価制度を加えたものです。

目標管理での評価:行動評価  8:2 といった感じ。

多くの企業ではこういうのが主流じゃないかな?

法務の仕事は定量化できない?

360度評価とは

よく言われることですが、法務は営業でいうところの売上1億円などの数値目標を立てられない or 立てるべきではないので360度評価のほうが向いているのではないかという疑問。

360度評価とは、部下や上司または他部署の人間といった複数人の視点で個人を評価する制度です。
どのような行動を評価するか評価基準の設け方が難しいデメリットがあります。
行動評価制度の評価シートをそのまま360度評価で行うと結局抽象的な基準に陥りがちです。

ただし、法務は他業種へサービスを提供する職種です。
部門内での組織統制も大切ですが保守的な組織を変えていくために外部評価が必須なことも事実だと思います。

正直、部内評価がどうであれ他部門の方がサービスに満足していればよいというのが私見です。
ですが、私は360度評価については否定的。

360度評価を導入すべきでない理由

360度評価は聞こえはいい。
けれども法務を理解していない他部門に評価をしてもらうのはめっちゃ危険です。

例えば、営業担当に対してYESマンになっている法務。
営業のいうことには何でも「OKです。問題ありません。」

営業担当からすれば契約締結もスムーズにいきますしめんどくさいこと言われないので重宝されるでしょう。
(皆さんも駆け出し時代には営業の「お遣い」になっていないか自分の立ち位置について苦慮されたはずです。)

ただ法務という仕事はリスクヘッジが基本。
普段の取引では問題が生じることが稀です。
問題が起こったときにはじめて法務の仕事が実行的であったか評価されます。

よって、法務の基本に背いた人が評価されてしまうジレンマとなります。

また、定量評価できないという点も疑問ですな。
「上期、他部門からの法律相談件数100件」を目標とすると、目標を立てたからには遂行しないといけないので積極的にヒアリングしたり開けた組織になるように努力するはず。

「契約書確認依頼時の1営業日以内回答率80%」という目標であれば、契約書の進捗管理を適切に行うようになるし、正確かつ適切に判断する目を養うため文書能力も向上させようとするはずです。

無理な目標設定は害悪でしかないが適度な負荷は潜在能力を引き出し成長するためには必要不可。

保守的な法務組織の場合、プロジェクトがないので時間を持て余すこともあるのではないかと。
その場合でも日々の契約業務で精度を高めることを怠っては行けません。

本当の問題

以上の理由で私は従前通り、目標管理制度と行動評価制度のMIXで問題ないと思います。

でも、弊社と同じ人事評価制度の会社で不満を持っている法務はたくさんいるのではないかと。
その理由は、不公平感と作業感にあると思います。

不公平感

まぁ営業と違って法務は管理部門だから頑張っても3かな(5段階中の)

よく聞くセリですよね?
確かに現場や営業の方が物を作って売るから会社が成長し社会貢献できるわけです。
彼らを優遇することに不満はないですがそれが法務の評価を下げる理由にはならなよなと。

また、目標管理制度についても若年層に成果主義的な厳しい評価をするために導入してない?と思う節があります。

あなたの会社にもいるんじゃないかな?なんでこの人が?って人。
反面、なかなか評価されずに転職していく優秀な若手。

全部評価の不公平感が問題だと思います。
私の転職理由もそうでしたし友人の話を聞いても多くがそれでした(私は優秀な若手じゃないですよ)。

こんな現状で「この点を高く評価してあげたよ」といわれてもセカンドレイプ的な絶望しかない。
むしろ不快です。

作業感

前述の不公平感とリンクして、どうせ評価されないという気持ちで目標管理シートを作成していませんか?

また、無理難題な課題だけど作れといわれたから、たいしてすることがないけど何か目標を立てないといけないからという気持ちで作成していませんか?

目標についても何度も上長から赤ペンが入って作成しなおすと作成の意義について疑問を覚えます。
それお前の目標やんって。

愚痴になってしまいますがPDCAのPだけ立派なケースが多すぎますよね…
反面、経営責任としての役員のCとAが適切になされていませんし…
個人的に日本企業の病理だと思っています。
生え抜きやサラリーマン経営者が多いからかな。

まとめ

以上のように公平感が担保されている目標管理制度を用いれば法務の人事評価にとりわけ問題ないと思います。

皆さんの会社はどうですか?

お役立ちリンクとして前述しましたがビジネスロイヤーズのリンクを張っておきますね。
この人事評価特集は結構参考になります。
https://www.businesslawyers.jp/articles/617

不満のある評価制度であってもそれに流されて腐っては成長できません。
せっかく働いている時間を無駄にしちゃいます。

であれば、当たって砕けろ的発想でチャレンジングな目標を立ててみてもいいのではないでしょうか。

例えば、コロナのこんな時期だからこそ押印制度の見直しや社内ワークフロー、電子契約システムの導入、それらに関する諸規定の整備など。

課題は多いですが法務激動の時代です。

皆様の実り多い一年になるように私も情報提供で役立てるよう頑張るぞ!というのが今年の目標です。
とまぁ早速定量的でない目標を立てたところで、本日はこれにて終了します。

最後までお読みいただきありがとうございました!