法務の在宅勤務はここが問題!

企業法務, 社内ルール

コロナウイルス禍によるテレワーク推進が叫ばれていますが、地方はおろか東京・大阪でもあまり進んでいないようです。

安倍晋三首相は7日の会見で、緊急事態宣言を1カ月で終了するには、人と人との接触を8割ないし7割削減する必要があると強調した。だが、テレワークの実施率が5.6%に過ぎないという衝撃的な結果が、厚生労働省がLINE(3938.T)に委託して実施した全国調査で明らかになった。新型コロナウイルスの感染拡大リスクの一つとして若者の無理解が強調されてきたが、企業経営者の対応にも大きな問題がありそうだ。

[東京 8日 ロイター]

皆さんもLINEで在宅勤務に関するアンケート調査が来て「なにこれ?詐欺?」とびっくりしたのではないでしょうか?

文書作成が主な業務である法務は、一見テレワークが進めやすく見えますが様々な問題点があります。

実際に私もテレワークして感じる難点が複数ありました。
よって、本日は法務が在宅勤務することによって生じる問題について記事にします。

法務テレワークの問題点

  • 押捺
  • 郵便物
  • 電話対応
  • 他部署との関係
  • 後輩指導
  • 灯台下暗し的な部分

以上について順に説明します。

押捺

代表社印の押印

【問題】
多くの企業では契約書への押印や申請を法務が管理しています。
登記された代表社印は会社で管理されており、濫用防止のため個人での持ち運びが認められていません。

そうした状況ではテレワークをしても部内で誰か1人は押印のため出社しなければならない事態に陥ります。
弊社もそのうちの一つです。

あくまでも、契約書に押印するかで契約の有効性は左右されません。
ただ、押印が無かったり代表者以外の押印がされた場合は、契約書が代表者によって真正に作成されたことが推定されなくなります(民事訴訟法第228条4項)。

しかし、契約書の真正が問題になるケースは少ないこと、問題になったとしても契約締結経緯における担当者のメールのやり取り、実際に契約書通りの受発注が行われていることの記録等から別途証明可能なケースがほとんどだと思います。

コロナウイルスでの感染リスク、感染者が社内で出たことのリスクを考えるとクラウドサインなどの電子契約システムを導入しても何ら問題はないと思います。

むしろ何時何分に誰が契約書を確認して、誰が押印(締結)したのか確認できるのでシステムのほうが利点があるんじゃないかな…

【解決方法】
電子システムを入れない場合の対応方法は、押印担当者の自宅に印を持ち帰らせる登録された実印ではないが、複数の「代表社印」としての印を作成し複数の押印担当者に持たせておく、完全テレワークでなければ押印必要時に担当者が出社する等方法はあります。

この場合、持ち帰りによる紛失や濫用の危険性の問題、「代表社印」としているものの登記された実印ではなく複数あることから真正の問題は残ります。
押印依頼に基づきエクセル等で捺印の帳簿管理することで濫用リスクは多少減らすかね。

電子システムを入れずに印鑑文化を残すには、「だれかが出社」するのが一番手っ取り早くコストもかからない方法だと思います。
実際にはほとんどこのシステムじゃないかな?

ツイッターを見ると、割り切ってコロナウイルス騒動が終結するまでは電子契約システムを入れ押印とバイバイした会社もありますね。
うらやましい限りです。

捺印申請

【問題】
また、押捺の問題を細分化すると前記の「代表社印の押印自体の問題」だけでなく「捺印申請にかかる問題」もあります。

代表社印をもらうためには捺印申請書の提出が必要かつ申請書に上長の押印が必要といった化石のようなシステムをもつ会社もまだあるかとおもいます。

この場合はさらに、どうやって上長の印をもらうかという問題が生じます。

【解決方法】
ただし、申請書については法的要請もなく、社内管理の問題なのでネット上のワークフロー申請に改める等対応は容易です。

紙からネット申請に変わることで、どこでも承認が可能となりますし、承認根拠資料がデータで残り承認日時のデータ管理が望めます。
また、ネット上のワークフロー管理のために人事情報をしっかり更新せざるを得ないので社員の入退社、部署異動がちゃんと反映されるという副次的な効果も望めます。

郵便物

総務部内に法務が置かれている会社では、法務が郵便物の処理を行うこともあり得ます。
会社に荷物が届く以上、誰かに対応してもらう必要があるのは事実です。
また、完全テレワークにする場合は、出社日までの局留めにしてもらう、外部施設に転送してもらう等、対応がないわけではありません。

しかし、郵便物の紛失リスクがあるので正直郵便業務が一番のネックになっているかと思います。
担当者の自宅に送るわけにもいきませんし…

弊社でも郵便担当者は複数交代で出社して回している状態です。
正直、この部分は私も対応に悩んでいます。

ツイッターでも問題的するのでご参考になる意見をいただければと思います。

電話対応

代表電話については、電話番を決めて一人ないし少数で対応する会社もまだまだあります。
その場合、電話番の方の会社携帯に代表番号への電話を転送するように設定しておけば済む話です。

ただ、代表電話の存在意義について私は疑問視しています(B to B 企業前提)。
まず、営業や事業所への直通電話でなく代表電話にかかってくる電話にろくなものがない!

「人事採用ご担当者様は~」「○○研修の件で~」とかもうウンザリ
この際、会社の固定電話の個数を減らしたり、全員在宅勤務の際は代表電話を取らない対応でいいと思います。

緊急の用で代表にかける人なんてまずいませんし。

他部署との関係

前述の問題点が物理的なものであったのに対し、これは心理的な問題です。

特に私のような製造業界に身を置く法務の方は
「現場は24時間交代で稼働しているのに私だけ在宅勤務でよいのか…」
と思うことも多いのではないでしょうか。

まぁ、割り切りやね。

その代り現場からの質問には全力即答するくらいの姿勢で取り組めば問題ないんです。

会社携帯を支給されているなら現場責任者からの着信音だけ変えてすぐ対応なども検討してよいと思います。

営業担当者とのコミュニケーションに関しては、在宅の都合上、口頭よりもメールでやり取りすることが増えるのでじれったくなるかもしれません。

今まで対面で済んでいたことがメールでは伝わりにくく、営業さんも時間があるので「そんなこといちいちメールを送っていられない」と思われることもあるでしょう。

その場合は、最低限答えてほしい内容のメールフォームを作成しておく、チャットボットを作成することも視野に入ります。
あらかじめ法務Q&Aを作成してイントラネットにアップしておくとか。

あとは、これを機に短く伝わりやすい文章を徹底するとか。
「言葉ダイエット」お勧めですよ。

物理的問題もさることながらまじめな方が多い法務においては心理的問題も侮れません。

ただ、自分がテレワークしたとしてもサービスで還元できればいい。

このことだけ心にとめておけば大丈夫です。

後輩指導

テレワークとなったことで後輩と顔を合わせることが少なくなりました。
今までは言葉で始動すればよかったですが、メールにしてみると結構ややこしい。
電話だと互いの時間も取りますし、営業時間後には電話できないし。

指導する側と思ってエラそうなことを言っていましたが、実際に言葉にできていない自分のレベルの低さを実感します。
わかっていることは言語化できるはずなんで。

また、顔を見て後輩のその日のテンションをわかってあげることで心のケア、働きやすさを促進していた部分がなくなる。
その裏返しで、後輩指導することによる自分の労働意欲の低下にもつながります。

顔を合わせなくなって初めて、「助けていたし助けられていた」ことに気づきます。

細かい部分でのやりにくさってあるんだなと。
ただ、同じ法務で働く仲間です。言葉だけで伝わらない部分も相手を思いやればなんのその。

必要あらば打ち合わせ時間を取って、ZOOMなどの対面型の会話アプリで連絡を取ればいい。
なんとなく恥ずかしい感じがしますが新鮮ですし後輩指導のためには必要なことです。

対面性を求めるなら多少の恥じらいを捨てて割り切りましょう。
(Youtuberとか本当にすごいよなと…)

灯台下暗し的な部分

みはさん実際にテレワークしてみて
「すぐ印刷できない環境って不便だな」
と思いませんでしたか?(私だけ?)

私は、契約書チェックするときは紙でコピーして赤ペン入れるタイプです。
家にプリンターもないので画面上でのチェックとなりますが、紙に出力した時よりも圧倒的に確認や修正の制度が下がっている気がします。

こんな時、やっぱりオフィス環境って恵まれていたのだなと実感。

始原削減も大切ですが思わぬ効果もあったんだなと思った次第です。

さいごに

つらつら述べてきた問題以外にも、会議までZOOMになったりと、画面を見る機会が増加したことから眼精疲労になったなど聞きます。
運動の機会が減ったとかもね。

「三密を避ける」ことさえ徹底していれば公園で軽い運動をしたほうがいいです。
我々、頭を使う仕事において体を動かして、体から頭を活性化させるのは非常に重要。

テレワークになって様々な問題が見えてきましたがこれを乗り越えればコロナウイルス禍が去った後も法務が非常に働きやすい環境がレガシーとなります。

狭い業界だからこそSNS等を利用して対処法を考え議論していきましょう!

本日はここまでとさせていただきます。
最後までお読みいただきありがとうございました。