【でんさい】電子記録債権と参考条項

企業法務

こんばんは。

毎週契約書をガンガン起案している法務ってどのくらいいるのでしょう……
(ここでいう「起案」とは、ゼロから始める契約書作成のことをいう。)

私は製造業界にいるため、取引基本契約の締結およびリバイスがほとんどを占めます。

取引基本契約書は通常、ひな型ベースで進むので起案することってあまりないです。
もちろん、起案するにもそれなりの経験は積んでいますが、過去の契約書から参考にできそうな部分を引っ張ってきて起案したりすることの方がほとんど。

ですので、製造系法務の方は初めての事例に案外弱いといってもよいと思います。(もちろん、私のようなザコでなく、起案ドンとこいの方もいると思いますが…)
また、初めての案件でも現場に即した用語を用いないと、現場からの違和感が凄く、反発必至です。

先日、支払条件を「でんさい」として契約書を作成してくれという依頼がありました。割りと悩んだ末、対応したのでここに記載したいと思います。
少しでも事例があれば、皆さんの参考にもなるのではないかと。

小話

ちなみに、支払条件を記載することってそんなに多くないです。

なぜだかわかりますか?


……
………


答えは、基本契約で具体的な支払条件を定めてしまうと、印紙税法上のいわゆる「7号文書」に該当することとなり、印紙代が4000円となってしまいます。

基本契約の印紙代は、通常200円ですので20倍もの費用を支払っていることとなります。

少しでも負担を減らすための知恵ですね。
印紙についても今度記事にしたいな~

ということで、今回はでんさいについて記載することとなりましたが、印紙税の下りを説明しても、「支払条件はある程度具体的に記載してほしい」という先方の要望があったから記載するに至りました。

「でんさい」とは

簡単に言うと、取引の支払いを電子化した債権で行うというものです。

1.窓口金融機関を通じてでんさいネットの記録原簿に「発生記録」を行うことで、「でんさい」が発生します。

2.窓口金融機関を通じてでんさいネットの記録原簿に「譲渡記録」を行うことで、「でんさい」を譲渡できます。 必要に応じて債権を分割して譲渡することもできます。

3.支払期日になると、自動的に支払企業の口座から資金を引落し、納入企業の口座へ払込みが行われます。

でんさいネットが支払いが完了した旨を「支払等記録」として記録しますので、面倒な手続は一切不要です。また、手形と異なり、納入企業は支払期日当日から資金を利用することができます。

でんさいネット/でんさいとは?より

支払条件をでんさいにする

さて、でんさいについての説明は、でんさいネットさんの説明に丸投げしたので…

通常、取引基本契約での支払条件の定めはこんな感じかなと。

甲は、目的物の引渡し完了後、目的物の代金を甲乙協議で定めた期日に乙に支払うものとする。

製品の納入月末締めにて翌月末までに、個別契約に基づき乙に支払うものとする。

結局、印紙代をケチる節約するため、基本契約を読むだけでは「いつ支払うねん笑」ってなります。

これに対して、でんさいで支払うことを私は以下の感じで記載しました。

製品代金の支払いは、甲乙が協議により定めた期日において、○万円未満の場合は、現金振り込みによるものとし、○円以上の場合においては、でんさい(記録請求日を起算日として120日後払い)によるものとする。なお支払いに関する手数料は、Xの負担とする。

前項の支払いの確認は、Xが指定する銀行の入金状況を確認することによるものとし、受領書の発行はこれを省略する。

これで、先方も納得して契約締結に至りましたが、正直私の文章力のなさもあるので、リーガルリスクがないとは言えません。

でも結局は、両社が支払条件について理解しているか、それが契約書から読み取ることにできるかに尽きると思います。

もちろん、具体的な条件がわからないと記載しようがありませんが、皆さんならどうしますか?

未熟な私に意見いただけますと幸いです。

ということで本日はここまで。
ありがとうございました。