「言葉ダイエット」は法務のバイブル【書評】

書評

あなたの文章デブってるよ?

ドヤ顔で営業に返事したメール
法律論を語った現場へのメール
事業部門からウザがられてますよ?

法務は正確な文書にこだわるあまり長いメールを作成しがち。
せっかく書いても読んでもらえないのでリスク喚起という役割を果たせません。

長い文章は言葉にたくさん贅肉がついた状態です。

本来の職責を果たすためにも言葉のダイエットが必須なのです。

ということで、今回は言葉ダイエット メール、企画書、就職活動が変わる最強の文章術について記載します。
まず本書の概要は以下のとおり。

概要

タイトル:言葉ダイエット
著者:橋口幸生
発行所:株式会社宣伝会議

なぜ文章がデブるのか?

法務のメールが長くなる要因は次の4つだと思います。

  1. 読んでもらえる前提でいるから
  2. 書き手がまじめで能力が高いから
  3. 法令には正確性が求められるから
  4. 文章を添削される機会がないから

順に説明します。
ちなみに、本書では1.と2.が挙げられていますが法務特有の要因として3.と4.を独自に追加してました。

読んでもらえる前提

みんな文章を読むのが好きで時間を持て余しているわけではありません。
営業は顧客にペコペコ頭を下げストレスマッハ
製造現場は怒号が飛び交い戦争のワンシーン
そんな状態で「ピロリーン」と法務からのメール

そもそもメールに気付いてもらえません。
気づいたところで、From法務 + 長文が目に入り一旦メールが閉じられます。

法務は文章を推敲する時間がありそれが仕事ですが事業部門はそうではない。
この当たり前に気づかないことが問題です。

まず第一歩として、メールを打つ前に現場を思い描くことから始めましょう。
何が見えてきましたか?(最悪なケースを思い描くほうがいいです)

すると自然に短いメールを心がけるようになるでしょう。

まじめで能力が高いから

ビジネスでは重役の方と話すこともありますし、自分が評価される場でもあります。
相手の気持ちを察しすぎるあまり「~させていただきたく存じます。」など過度な言い回しが多くないですか?

責任を取りたくない気持ちが出て単純な質問に対して「○○が両案かと思われますが……」など言い訳がましい文章になっていませんか?

人の気持ちを察することができる優秀なビジネスパーソンだからこそ問題が起こるのです。
本書で目からウロコなポイントでした。いわれていればそうですよね。

弁護士以上に優秀と思える法務も多々いますから。

↑この文章を書く際も弁護士や法務の方に配慮して最初は以下のように書いていました。
「世にある法務ブログを見渡しても、一部弁護士以上に優秀と思えるような方もいらっしゃいますから。」

贅肉をつけやすい体質になっていますね…注意注意

法令の正確性

法務特有の問題ですが、読み手の法律知識はゼロなことが多い。
にもかかわらず法令のあてはめには正確な情報が求められます。

「請求できますか?」という単純な質問に対しても
「2018年3月3日付取引基本契約の第12条の第2項によれば~」
というように前提から長々と説明することありませんか?

実務ではグレーなものが多く、ほとんどが断言できないケースだと思います。
結果、長々説明した挙句「可能かと思われます。」みたいに回答しちゃう。

営業からすると「で、どうすりゃええねん笑」

端的に、「請求できます(やりましょう)。根拠は別添参照です。請求書類はコチラで作成するので詳細は打ち合わせましょう。本日の午後あいてますか。」
これでヨシ!

正確性については、別添でファイルをつけるか別途メールで補足すればよいです。
後から見返す根拠となる書類だからこそ、別添ファイルのほうがいいですよね。
メールではいったり来たり、表示も見にくいですから!

また、心配なら打ち合わせで説明してあげればよいです。口頭で何も残らないことが心配なら打ち合わせの議事録を作成してあげてください。

そこまでサービスして初めて、現場で戦っている人と釣り合いが取れると思っています。
(いや、それでもまだかな…)

文章を添削される機会

法務部が大きな会社あります?そりゃあるけどね…
でもそんなのごく一部の小指の詰め先ぐらいの会社だけですよ。

大半の会社では法務部がない or あったとしてもヒトリ法務です。
事業部の方も法務はややこしかったり、寡黙で難しいイメージを持っていることも多い。
ですから「あなたの文章読みにくいよ?」と指摘してくれる人がいないのです。
営業と違い外部に送るメールもそこまで多くないですし。

添削されないとどんどん長文メールを打つ癖がついてきます。
ストレートに「メールを添削してくれ」と上司や友人にお願いしてみましょう。
自分が思っている以上に赤が入って返却されますよ。

法務の友人は契約書を修正するときに「血で染めたったわ」とよく言ってます笑
あるあるですかね?
話を元に戻します。

赤を入れられたときどんな気持ちですか?
鏡を見てください。あなた怒ってますよ?

この辺が法務に現れるプライドです。
正確な文章をこれでもかと考えて記載したのに!
でも、現場の要求とずれていれば意味ないんです。
砂漠で釣り竿渡しますか?

勇気をもって添削依頼しましょう。

小まとめ

文章が長くなる原因について列挙しましたが、グサッと刺さったのでは?
私も負傷しましたというかしてる。

原因がわかれば意識が向きます。
もうメールが改善される第一歩を踏み出しているのです。

続いてどうやって文章をダイエットするか記載します。

文章をダイエットする方法

本書の筆者は、ダイエットは才能ではなく訓練して習得するものだと主張します。
おいしい料理はおいしいものを食べた職人にしか作れません。
文章もまたしかりで、日ごろから良い文章に触れ、それを作る姿勢が一番重要

創意工夫することは大切ですが、まずは以下のルールに従って機械的に型を覚えることから始めましょう。
この辺も職人みたいな要素ですね。

本書で記載される型は以下のとおり。

  • ①一文一意
  • ➁1文40~60字
  • ③抽象語(修飾語・カタカナ語)禁止
  • ④繰り返し禁止
  • ⑤無駄な敬語禁止
  • ⑥表記を統一しよう
  • ⑦こそあど 接続後の連発禁止

③に関しては笑える例が紹介されています。
ナレッジ化されたコンテンツ・マーケティング戦略をドライブさせる」とか笑
2ちゃんねるやツイッターでネタにされる文章になっていないか、振り返ってみましょうね。

ステークホルダー、コミッション、ディール、レピュテーションリスクなど法務も使いそうなカタカナ語がありますが使わないのが無難でしょう。

また、③と④は関連します。
例えば「解決のソリューション」とかカッコつけたせいで重複しちゃったり……
ってこれ私の最初の投稿記事のことですね笑
本記事投稿後、修正して再アップ予定です…

本書に従って過去の投稿やメールを見返して修正していきます!

法務では特に➁と⑦に注意が必要です。
最高裁判例を読んだことがありますか?
一文が何行も続く文章が出てきます。

もちろん、「法律ムラ」の中ではそれが正しく必要な文章です。
ビジネスの場面ではおよそありえないことはわかりますよね。
これは接続後の多用が原因です。

「しかし」、「よって」、「したがって」、「なお」、「ただし」などの接続語は使わないといった割り切りが必要です。
契約書を記載する際ですと「ただし書」や「なお書」の連続で結局何を規定しているか不明確になることもあります。
思い切って複数の項に分けたり、各号列挙の形に修正しましょう。

よく考えると①にも該当しますね。
接続語でつなぎまくれば一文一意ではなくなりますから。

このようにダイエットについて1つ意識するだけで関連する問題点もおのずと改善されるのではないでしょうか。
本書を読んで初めて気づく点が多かったです(←社会人何年目?)

また上記に加えて、法務が送るメールは結論先行型に努めて最初の4行見れば内容が分かるように徹底すべきです。

現場の方から「わかりましたありがとう!」が返ってくるまでの時間や返答率が改善されますよ。

一度こいつは頼れる法務だなと思わせればこちらの勝ちです。
どんどん頼られて会社の事業について最新情報をアップデート。
案件も舞い込んで法務としての経験が蓄積されレベルアップ!

いいサイクルを生み出しましょうね。

本書では他にも言葉をダイエットするコツが記載されています。
ハッとさせられた点は「読点は少ないほうがいい」、「文末はそろえない」って部分

特に司法試験にどっぷりつかっていた法務の方
読点を打たないと読みにくいと指導されませんでしたか?
読点が多いということはそれだけ文章が長くなっているということ。
いっそうのこと読点がなくても読める短い文章を作ってください。

また文末をそろえると文章が稚拙に見えます。
確かにそうですよね。メールでありがちですが、

契約書をかくにんすることとなります。
確認後、請求を行うか検討することとなります。


みたいな感じ。法務の方は自分のメールに「こととなります」が多用されていないか確認してみれはいかがでしょうか?(私だけかな…)

まとめ

本書では基本的に
型の説明→例を挙げた問題提起→技を使うとどうなるか提示→ダイエットが簡単なことを証明→練習問題→項目のまとめ
と流れていきます。

200ページ程度の短い本ですしテンポよく読むことができます。

また、文章がデブる原因・解決方法だけでなく筆者が広告業界で培った面白エピソードや、読んでいて胸が打たれるコピーが登場します。
本書の核心部分ですのでコピペできませんがぜひ手に取って読んでいただきたい。
実際に、文章で心を揺さぶられる経験が味わえます。

小技として、世の広告や映画の多くに三幕構成が多いことや、主観的事実と客観的事実を織り交ぜて共感を生む

など伝えたいことを的確に伝える術も満載です。
この点はどちらかというとメールより企画書や転職の際のエントリーシート作成に役立つかな。

ただ一つ言えることは
読んだ後にワクワクすること。文章を書こうという気持ちになれること。

あとがきにも筆者が伝えたいこと、実現したいことは文章を通じて仕事を楽しく効率的にしようということ。
私にとっては著者の意図したとおりの結果になったと思います。

いまもはやる気持ちでブログをしたためましたからね笑
今後の業務では意識的に訓練していこうと思います。

最後に本書に影響されて、法務として私が考えたイキリキャッチコピーで閉めます。

平凡な毎日。その一言が私の成果です。

~とある法務部員~

……と、ということで本日はここまで。
ダイレクトマーケティングとして本買ってくださいね笑

書評

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