品質保証と瑕疵担保の違い【誤解しがち】
法務パーソンであれば品質保証や瑕疵担保責任と毎日顔を合わせていますよね。
もうすぐ契約不適合責任にかわるな~と頭に浮かぶ人も多いかと。
他方、法学部やロースクール出身で社会人経験なく法務に就く方にとって、瑕疵担保責任に馴染みはあっても品質保証についてはよくわからないのではないでしょうか。
契約書でも混同されることが多く、タイトルと内容がごっちゃになっていたり…
電化製品によくある1年保証?
保証の表明だから表明保証?
瑕疵担保責任と違うの?
などイロイロ疑問があるかと。
そこで、本日は品質保証と瑕疵担保責任の違いについて解説します。
※本投稿は、契約書作成の実務と書式 — 企業実務家視点の雛形とその解説 第2版を参考にしています。
品質保証
売買や製造委託の対象となる目的物についてどのように品質を決定するか、必要な品質はどのようなものか記載されています。
売主は「債務の本旨に従って」目的物を提供する必要があります。(民法493条)
何が「債務の本旨」か当事者の合理的な意思から解釈されますが、民法の原則では「中等の品質を有する物」を供給することとなっています。
上記からわかるように、品質について明確に定めないと両者の理解がずれることは必至です。
品質保証条項で必要な品質は、「別途合意した仕様書に適合する品質だ」と明示することで「債務の本旨」が明確になります。
モーターの製造委託を例にすると、仕様書で「10年後定格回転速度を保つこと」とあれば、10年後も正常に動く品質が求められます。
7年で正常に動かなくなれば売主の債務不履行となります。
このように、品質保証は仕様書等で明確にされる品質についての定めであり、製品の製造・販売から使用に至るまで一定の性能を保証するものです。
参考情報は以下のとおり。
別途仕様書で示すver.
乙は甲に納入する本製品の品質について、甲の指示した仕様書に適合することを保証する。
文中に示すver.
乙は甲に納入する本製品の品質について、以下記載する仕様に適合することを保証する。
回転数: 温度0°~10°の使用下で回転数秒速○○回
保証期間:製造から10年
また、品質そのものだけでなく、品質管理のための内容も記載されていることが通常です。
甲の指示する書面を○○年保管する。同書面を甲の指示に従い提出するなど。
特に、製造現場で作成される検査完了書やSDSなどが念頭に置かれています。
ちなみに家電の保証とは何か
家電についているメーカー保証は、メーカーから一方的にカスタマーに差し入れられるものです。
解釈は様々だと思いますが、「カスタマーが保証書に必要事項を記入して保証を求めること」を条件としたメーカーの意思表示とみることもできますね。
この場合、カスタマーが保証を求めた時点で、メーカーが記載する内容の保証について契約が成立することとなります。
カスタマーが保証条件に従って修理等を請求できるということですね。
瑕疵担保責任
納品後の検収を前提として後日品質を満たさないキズや不具合があった場合の売主に対する責任追及が記載されています。
瑕疵担保責任は製品の製造時から存在する不具合(原始的瑕疵)について検査をしても分からなかった場合に買主を保護する規定です。
売主は原始的瑕疵のある物を販売・製造して買主から満額を得ているんです。
この不合理な状態からの保護ゆえに、無過失責任なのです。
瑕疵担保責任の条項は実務上様々なアレンジがされています。
品質についてどのような品質か、瑕疵担保責任条項であわせて記載する例も見られます。
だから品質保証と瑕疵担保責任の違いが分かりにくくなるんですね…
参考条項は以下のとおり。
いい例
製品に検査で発見できない瑕疵があり、甲が検収後○○カ月以内に乙にその旨通知したとき、乙は甲に対してその指示に従って代替品の納入若しくは瑕疵を修補し、又はこれらと合わせて当該瑕疵によって甲が被った損害を賠償する。
わるい例
1.甲の検査合格後○○カ月以内に、本製品に何らかの瑕疵が発見された場合、乙は甲の指示に従い、代替品の納入若しくは瑕疵を修補し、又はこれらと合わせて当該瑕疵によって甲が被った損害の賠償をする。
2.乙は、前項の期間経過後であっても、乙の責めに帰すべき事由によって本製品を使用した甲の完成品に重大な影響を及ぼした場合、甲が被った損害を賠償する。
わるい例の方は売主は検査後もずっと責任を負い続ける可能性があります。
もはやただの債務不履行責任との峻別もあいまいとなっています。
よって、契約書では、
- 瑕疵がどの段階で発見された場合か
- 検査後の通知を必要とするか
- 何を請求できるか
- 権利行使がいつまで可能か
上記四点を必ず明記しましょう。
売る側も買う側も、要件充足が判断できず条項が絵に描いた餅になってしまいます。
両者の違い
簡単にまとめると両者の違いは以下の表のとおり。
ざっくりいうと、もともとある不具合か、これからの不具合かで分けることができます。
品質保証はスペックや製造体制について記載されているので、どちらかというと法務より製造現場マターで定めるべき内容です。
製造業界では、品質について基本契約書で、
「別途品質保証協定書記載のとおりとする。」などの規定が定められることが通常です。
まとめ
少しは違いが判りましたか?
「契約自由の原則」の名の通り、ひじょーに自由な取引が行われているので、ごちゃごちゃしてわかりにくいのも当然です。
ごちゃごちゃな契約ばかりあふれているのだから。
法務は内容を紐解いていかなければなりません。
とはいうものの、先方ひな形を大幅に崩してまで品質保証と瑕疵担保を分ける必要はありません。
互いに内容が理解で来ていればよいのです。
両者の峻別が契約の核心でなければ私はあまり書き分けを気にしません。
野暮な修正はしない主義なので。
ただ、ごちゃ混ぜであることは伝えておきます。
その状態自体が一つのリスクだからね。
ということで、本日はここまで。
最後までお読みいただきありがとうございました。