法務が転職を考える際のポイント

法務の転職

4月は出会いと別れの季節。

転職はその最たるものであり、人生を大きく左右します。
コロナウイルスの感染拡大防止で緊急事態宣言がなされてそれどころではありませんが、奇しくもこれがリモートワークを推進したり、押印業務の見直しなど法務にとって働きやすい環境も急速に整っています。

反対に、この期に及んでも働き方が変わらない会社に絶望している人も多いのではないでしょうか。

そこで本投稿では、法務から法務への転職を念頭に法務が転職を考える際、大切にするポイントについて記載します。

すぐ転職する必要はありませんが、転職について考えることで今の会社にとどまる際も働き甲斐を見つけるきっかけになると思います。

転職理由の見極め

転職理由というか不満を持っているポイントですね。
これを見極めないと、転職後の満足につながりません。

転職活動中に自分の転職の軸がぶれ「あれ?なんで転職したいんだっけ?」と思うことが結構あります。

特に、転職する気マンマンで活動をはじめてなかなか転職先が見つからないとき、有休残が少なくなるにつれて焦りが出でたり、自分の実力がないのかという絶望を感じた際、転職の軸が定まっていないと内定をもらった適当な企業に決めちゃったりします。

こんな転職は絶対にNGです。
よってまずは自分の転職する理由を明確にしましょう。
主に、法務から法務への転職理由は以下の通りかと思います。

  1. 待遇面
  2. 業務内容面
  3. 大事にされているか

順に転職を考えるにあたっての大切なポイントを挙げていきます。

理由①:待遇面

日常生活に直結する一番大切な要素です。
この要素の中でもさらに細分化することができます。

  • ワークライフバランス(勤務時間)
  • 給与額とその将来性
  • 安定性

ワークライフバランス

転職活動の理由が単に待遇面であれば転職後満足を得られるか、想像しやすいといえます。

注意すべき点として、待遇面は求人情報から形式的に判断できるように思えますが、「手当の適用があるか」、「残業が少ないか、有休をとりやすいか」については実際に行ってみないとわからないことが多いこと。

この点、極力先輩や知り合い、転職エージェントからの報告を頼りにした方がいいです。
雰囲気的なところは実際に中を見てみないとわかりません。

待遇面を重視するなら、周りから情報を仕入れるだけでなく、面接で根掘り葉掘り聞くことを怠ってはいけません。

質問の際、「求人情報にあった○○手当の適用があるか」、「残業することに問題はないが実際どれくらいの残業時間が平均か」具体的にぶつけましょう。

口をつぐむようであれば、使用された実績がない規定(育休や書籍購入、留学等)を置いているだけの可能性や、実際に帰りにくい雰囲気がある可能性が大です。
面接で待遇面の質問をしてよいのかという疑問もありますが、仕事していく中で最も大切な要素です。こんなことを聞いてマイナスをつける企業に転職しても幸せは100%ありません

割り切って聞きましょう。
「働き方改革に関連して~」など、昨今便利な枕詞があります。
聞き方は大切なのでストレートではなく柔らかに聞いてみましょう(面接の雰囲気にもよりますが)。

給与額とその将来性

転職の際は、給与面が400万円~600万円と幅のある記載がなされていることが多い。

面接で必ず希望年収を聞かれると思います。
今の自分の年収を加味して正直にぶつければいいんじゃないかなと思います。
給与額を重視するなら聞いて納得しておく必要があります。
もちろん浮世離れした希望はNGです。
よほどのことがなければ現状+αにとどまると肝に銘じておきましょう。
また諸刃の剣的な技ですが、転職エージェントを使わない直接応募を検討することも良いでしょう。

直接応募では会社が転職エージェントに支払う手数料がかかりませんから、その分採用時の給与面を頑張ってもらえる可能性があります。
現に私の友人でも直接応募ゆえに採用&給与アップした例があります。

ただし、人事部の多くは中途採用については転職エージェントを介することが多く、自社サイトに中途募集を設けていても自社選考はしないことも多いです。
既存の転職サイト+自社での志願者管理が必要なうえ、転職サイトで応募してきた方を、サイトを通さずに直接応募で受け付けたりすると会社と転職エージェント間の契約違反となるからです。

よって、よほど熱い希望がない限り直接応募は避けたほうが良いというのが私の意見です。

隠れた利点ですが、日本式雇用制度=年功序列的なところほど年収予測が立てやすいです。
また、いい意味でも悪い意味でも経験が加味されない。
大学時代に浪人、留年した方や、ロースクールで司法試験に挑戦していた方などの社会人経験が同年代の人に比べ低い方はどうしても年収が劣ることがあります。
このような場合、逆に年功序列の会社は年収アップが望みやすいです。

ただし、後述の給与額の将来性に関連しますが、ずっと年功序列制度が続く保証はないですし、やる気を出して働こうという方にはモチベーションをそがれるポイントにもなるので注意です。

給与額の将来性については…… 正直難しいところですね。
この点も面接で代替の給与制度を聞いておくほかありません。
後は四季報から予想することはできますが不明確な点は残りますし、人によって給与面に差が出ることも多いのであてになりません。

固定昇給があるのかだけでも聞いておくべきですね。
この点重視するなら、歩合給的な部分が多い会社や調整給、固定残業代が含まれている会社は絶対にNGにしておくべきです。

固定残業って結局、加味された時間より残業が多ければ残業代を支払わないといけないわけだし、特にメリットがない気がします。
それなら基本給を挙げればいいわけだし…
あまりいい使われ方をしている例を見ないのでやめるのが無難だというのが個人的感想。

会社によっては固定残業代が高いが、入社とともに年々減少させる制度を設けているところもあるので…

安定性

経団連も終身雇用の崩壊を告げた昨今では、あまり期待していない方も多いとは思います。
生来のライフプランを立てるためには安定性も必要です。

現職の会社の財務状況が良くないことをもって転職活動することも大いにあり。
ただし、転職先の会社がつぶれないとは限りません。
転職検討している企業が上場企業であれば財務諸表を必ずチェックすること。
チェック後、M&Aや事業譲渡のウワサがないか調べましょう。
「日経テレコン」等の情報サービスを使って探しても良いでしょう。
(社内のシステムを使うことは限りなくグレー寄りのブラックですが……)

安定していると自分の現在の業務とは別のことに挑戦しよう、現在の業務をもっとフカボリしよう等失敗してもチャレンジする後ろ盾ができます。

この安定性を盾にした挑戦こそがサラリーマンの特権です。
安定を重視するなら上記の財務状況等の調査に加え、副業禁止規定がないかも調べておきましょう。

理由➁:業務内容

法務は経験を積んでナンボの世界です。
定型的な契約書を数こなすだけでは個人的には全く意味がないと思っています。
(ルーティンワークを創意工夫で改善している場合は除く)

ですから、現在契約書レビューしかやらせてもらえないことを理由にした転職は大賛成です。
(もちろん教育期間である場合は除きますよ)

「意味の分からない契約について内容をまとめて書面化する」
「社内のシステムや規定の導入を行う」
「新たな事業のプロジェクトメンバーに入る」

こういった経験が全くない方は、自分で社内業務の幅を広げてみる。
どうしても会社的に業務が広がらないなら即転職を検討しても良いかと思います。

よく、「3年するまで転職しないほうが良い」といった意見がありますが、それまでに自分が新しいことを任される環境か、なんとなくわかると思います。
もちろん、経験やスキルのない人間に機会は巡ってこないのである程度の辛抱は必要です。

ですが、すぐに辞めずとも転職の機会を図りつつ業務を続けることをお勧めします。
働いている間にイロイロ挑戦させてもらえる機会ができれば、それは経験を積む必要があったというだけのことですし、転職をやめて元の会社にいればよいだけですからね。

企業法務のブログは世にごまんとあります。
イロイロ見てみましたか?
当ブログを除き、どのブログの作者も文章力が高く、読書もしているし様々な挑戦をして輝いていると思いませんか?

そんな経験がしたいと思うのであれば、理由①で述べたようにチャレンジできる会社の後ろ盾と、業務を広げるチャレンジできる機会を与えてもらえることは重要です。

私は65%くらいの力でのらりくらり過ごしたいので安定した会社でのんびりしていますが(コロナもあるしこんなこと言ってられるのは今のうちだけかもしれませんがね…)。

理由③:大事にされているか

何よりも働くモチベーションに大切な点は法務が社内で大事にされているかだと思う。

結構、共感する人多いのでは?

肌感覚で分かると思いますが、これを測るバロメーターは、
・他部署からありがとうと言ってもらう機会が多いか
・法務が企画した研修に素直に参加して聞いてくれるか
・プロジェクトを組む際に法務にもきっちり話がふられているか
などかなと思います。

大事にされるっていうのは「ありがとう」もそうですが、「情報が入ってくる」、「情報を聞いてくれる」立場があるかってこと。

やる気があって、「俺が法務の地位をこうじょうさせてやるぜぇぇ」ってなっている人もいると思います。
特に新任一人法務であれば。

例えば、ビジネスローヤーの企業の法務部特集でなんか横文字並べて企業法務を切り開いてきた的な話が掲載されていますが、全くの零細企業や中堅企業の記事ってないですよね…

どの企業も皆さんが名前を知っているような大企業です。
ものすごく頭が良くて努力もされた一流なのでしょうが、同じ人が零細企業に入って何かを変えられるかといわれればそうとは限りません。

今まで何年も企業法務が積み上げてきた積み重ねで現役の方の法務の立場があります。

法務が大事にされる土壌があってその中で頑張ってきた人が何代もいたから記事になるような活躍ができるわけです。

ですから、新任一人法務が志を高く持つのは結構なことなのですが、会社は組織という箱なので、そもそも法務の箱が認知され情報が入ってこないと活躍の機会自体が与えられにくいですし活躍しようがありません。
結果、ありがとうも少ないのでモチベーションが上がりにくい。

総務部の中で「法務」という仕事が区別されることなく誰かがやっている、という状況では何か法務としてチャレンジしたくてもさせてもらいにくい環境であることは確かなはずです。

日々の業務で管理部門が金食い虫だと思われているような会社はNGです。
どうしても会社の事業内容に興味がある場合は別ですが。

この点、社内で法務部がある会社であればいいわけではありません。
法務室や法務課、法務係でも大切にされる土壌がある会社はあるはずですから。
会社に入る前は判断しにくいと思います。

それこそ、法務が大切にされていない、俺って本当に必要なのかな?役に立っているのかな?と思う方は、ビジネスローヤーで特集されるような会社から転職先を探してみるのもいいと思います。
少なくとも仕事がしやすい環境でしょう。


面接で質問するなら…
子供じみた質問ですが私なら「最近どんな時にありがとうをもらいましたか?」とか「一番印象に残っているありがとうってありますか?」って聞くかな。
「何かを成功させた経験」というと相手もきれいな感じで返してくると思うので、素直に法務が楽しんで大切にされて仕事しているのか図るにはストレートな方がいいと思います。

最後に

考え方は人それぞれですが、自分はぼんやーり①~③を考えて転職に踏み切って今は満足しています。

もちろん不満の種はありますが、前回や前々回の転職と同じで①~③を改めて考え直すだけです。

逆に、初めて転職した時と今ではだいぶ重視するポイントは変わっていますがそれもウェイトの問題です。
要素に変化はありません。

あんがい転職を考えたほうが今の仕事も前向きに取り組むことができますよ?
まぁこんな時期にこんな記事書いちゃいましたけどカオスな今だからこそ、自分のかなにたまったカオスな不満を転職をまじめに検討することで解消してみてはいかがでしょうか。

皆さんの朗報、お待ちしております。

ちょっと時間が無くて使った転職エージェントのまとめ記事が進んでおらずすいません。

転職記事の充実は目下の課題としております…

ということで本日は終わります。
最後までお読みいただきありがとうございました。