記名と署名【言葉の違いをフカボリ】
こんばんは。
少し日が開いてしまいました…
前回は「押印」と「捺印」の言葉の違いについて記事にしました。
今回も引き続き言葉の違いシリーズです。
前回の記事はコチラ
記名とは
本日は、「記名」と「署名」の違いについて説明します。
まずは、記名について。
記名とは
三省堂 大辞林 第三版
①名前を記すこと。署名。
② 〘法〙 ゴム印・印刷・タイプなどで氏名を記すこと。
また他人が代わって氏名を記すこと。署名とは区別される。
署名について
続いて、署名について。
署名とは
三省堂 大辞林 第三版
文書上に自己の氏名を記載すること。また、その記載された氏名。本来は自署である。
記名と署名の違い
はい。さっそくネタバレしちゃいましたね。
双方ともに文理的な意味では、「名前を記すこと」という点では共通しています。しかし、絶対的に異なるのが、自署という方法で記すことが「署名」であるということです。
サインですね。あの、筆記体で書くとカッコいいやつ。
記名ですと、会社によくある「代表取締役○○」でもよいことになります。
この自署するということから、記名と署名では裁判における証拠能力に明確な差が出ます。
証拠能力について
書面を裁判上の証拠にしたいという場合、その書面が裁判に関係ある物なのか、真正なものか、という点をクリアししてはじめて裁判上の書証とすることができます。これが書面の証拠能力です。
書面に記名されているのか、署名されているのかで全く異なることとなります。
民事訴訟法第228条
1.文書は、その成立が真正であることを証明しなければならない。
2.文書は、その方式及び趣旨により公務員が職務上作成したものと認めるべきときは、真正に成立した公文書と推定する。
3.公文書の成立の真否について疑いがあるときは、裁判所は、職権で、当該官庁又は公署に照会をすることができる。
4.私文書は、本人又はその代理人の署名又は押印があるときは、真正に成立したものと推定する。
5.第2項及び第3項の規定は、外国の官庁又は公署の作成に係るものと認めるべき文書について準用する。
上記第4項を見ると、「署名又は押印があるときは」、真正に成立したもの推定するとあります。
つまり、ゴム印で記名しただけの書類では、真正に成立したという推定が働きません。
推定が働かないので、自らこの書面を○○が作成したことを証明する必要があるのです。
ものすごく手間ですし、証明できないリスクがありますよね。
ですから、ゴム印を押す場合は、記名+押印してください。
めちゃくちゃ大事なことなので!
証明力について
先ほどの、証拠能力とは異なり、証明力は証拠である書面がどれだけ事実を証明するものであるのか、その強さです。
一応確からしい書面で証拠能力があったとしても、その書面をどれだけ信用してよいのか別問題だということです。
ここで、「記名」はゴム印等による押印です。
「代表取締役65%の人」なんていう印は、その会社に勤めている人なら簡単に押せちゃいますし、作ろうと思えば第三者でも簡単に作れちゃいます。
また、ゴム印を押すことは、代表者の署名をとることに比べれば社内での決済も容易であることがうかがえます。(むしろ制約なんてないことが通常です)
ですから、ゴム印を押して、代表社印が押されている書面よりも、代表者の署名と押印がある書類のほうが信用できますよね?
つまり、証明力の点においては(署名押印>署名>記名押印>押印)となります。
(定量的には判断できませんが…)
まとめ
というわけで、記名と署名では、証拠能力および証明力に大きな差が出るということでした。
まぁ、ほとんどの会社はゴム印での記名+押印だと思います。
実際これで証拠能力とか証明力という点で不便なことって生じるんですかね?
教えて!偉い人!
ぶっちゃけ、印鑑の保管や押印申請なんてめんどくさいことやめて、サイン一本にすればいいのにね…
と思う今日この頃…
それでは皆様さようなら!