印紙税について【製造業の法務必見】

署名捺印・印紙, セミナー備忘録

契約書には、印紙を貼付することがあります。

法務の方は、事業部門の方から
「印紙をいくら貼ればいいんですか?」
と質問されることもあるのではないでしょうか。

案外、印紙税については知識がなかったり、従来の取り扱いに沿って印紙を貼っているだけの場合も多いのではないでしょうか。
経理部に聞いてもよくわからないとかえってきたり…

今回は、印紙に関してセミナーを受けたということもあり、備忘録として印紙税について記載します。

印紙について法務がどのように処理すればよいのか。
特に製造業界に焦点を当てて説明させていただきます。

印紙税の性質

税のカテゴリは、次の4種類があります。

  • 流通税
  • 消費税
  • 所得税
  • 資産税

この中で、印紙税は「流通税」に該当します。

流通税とは、財産や権利の得喪が生じた事実に対して担税力があることを根拠に課税される税金です。

説明されてもイマイチなんのことか分かりにくいですが、詳しく調べたい方には「新しい印紙税ー解説と法令通達」という書籍をおすすめいたします。

契約書も、権利の得喪を証明する文書であるため、流通税である印紙税がかかる場合があります。

印紙税については、法務担当者はおろか、弁護士や国税庁の内部でも精通している人があまりいないとのことです。

誰が印紙税を納める?

印紙税の納税義務者は、課税文書の作成者となっています。
そして、印紙税の納め方は、印紙を貼付して、消印することです。

ちなみに、消印は、一方当事者の押印又は署名でもOKです。
また、印紙を貼付し消印を忘れていた場合に、印紙税法違反となることはなく、指導されるだけであることが慣例となっているようです。

三者契約など、二名以上が共同して文書を作成した場合、全員で連帯して印紙税を納付する義務を負います。

実務上は、甲と乙が印紙を貼付すべき契約書を作成した場合、乙が印紙を貼付していなかったとき、甲が印紙税を代わりに納めさせられることはないとのこと。
よって、契約書を保管する当事者が、自ら保管する契約書に印紙を貼って消印することとなります。

課税対象の文書

印紙の貼付が必要な文書は、国税庁の「印紙税額一覧表」に記載のある文書です。

一覧表はコチラ

これですね、一覧表に記載されていることから、必要な印紙金額が一目瞭然であるかのように思えます。
しかし、実は解釈に幅がありかなり難解です。

製造業界に属する法務の方は、主に2号文書及び7号文書が関係すると思います。

2号
請負に関する契約書

7号
継続的取引の基本となる契約書で以下に該当するもの。

  1. 継続的取引の基本となる契約書のうち、契約期間が3ヶ月以内であり、かつ、更新に関する定めがないもの
  2. 営業者間で締結される契約書であること
  3. 基となる契約が、売買、売買の委託、運送、運送取扱い、請負のいずれかに該当すること
  4. 上記の売買などの契約に関して2位条の取引を継続して行うことが予定されているもの
  5. 2位条の取引に適用される取引条件のうち、目的物の種類、取り扱い数量、単価、対価の支払方法、債務不履行の場合の損害賠償の方法又は再販売価格を定めていること

課税文書に該当するかの判断に際しては、契約書タイトルのみか判断することなく、文書の個々の内容から判断することとなります。

また、課税対象の契約書とは、契約当事者間での契約の成立・更改・変更・補充の事実を証明する目的で作成される文書をいいます。
よって、解約合意書や、発注を行った事実を証明するための発注書は契約書に該当しないので課税文書ではありません。

誤解しやすいポイントですが、契約書のコピーは課税文書になりません。
リーガルテックで話題の電子契約ですが、実際に紙をおこした契約書をスキャンして先方に送付したとしても、スキャンデータ及びその出力したコピーは課税文書ではありません。

罰則について

課税文書に印紙税が貼付され消印されていないことが、税務所の監査で明らかになった場合、課税文書に本来納める印紙税額に加え、その2倍の金額の過怠税を支払う必要があります。

税務所の監査においては、社内のすべての文書を調査されるわけではなく、法務部や購買部といった、部門単位で調査されることが多いようです。

また、調査で部内すべての契約書が調査される訳ではなく、例えば部内に契約書が1000通ある場合、100通のサンプルを調査し、20通に適切な印紙が納められていないときは、1000通×20%で、200通に不備があるとして、不納額を推計して判断する場合もあるようです。

ただし、実際に過怠税を支払うケースは少なく、印紙税を納付していないことを申告する、印紙税不納付事実申出書の提出をもって、1.1倍の額の納税に軽減されることがほとんどのようです。

幸い、弊社には実例ありませんが皆様の会社ではどうでしょうか。

法務としての対応

さて、本題ですが法務としてどのように印紙税を納めればよいのか、思考のフローを記載させていただきます。
※契約が製造委託であり、1号文書に該当しないことがことが前提です。

まずは文書の属性を決める

契約書が何号に該当するか、属性を決める必要があります。

2号文書と7号文書の両方に該当する契約書は、優先的に7号文書として取り扱われます。

7号に該当するかのミソは、目的物の種類、取り扱い数量、単価、対価の支払方法、債務不履行の場合の損害賠償の方法又は再販売価格を定めているかです。
これらのうちの1つも定めていない場合は、7号文書ではなくなります。
よって、2号文書として処理することとなります。
1つでも定めていれば、7号文書として扱えばよいです。

金額の判断

上記で2号文書に該当する場合は、以下のプロセスで課税金額を判断しましょう。

①1つの文書に記載金額が複数ある場合

合計金額が記載金額として扱われます。

➁1つの文書に、2号文書の記載金額と、2号以外の文書に該当する金額がある場合

2号文書該当部分の金額のみが記載金額として扱われます。

③記載金額が区分されていない場合

合計金額が記載金額として扱われます。

契約書が変更契約書である場合

①変更契約の記載金額が変更前の金額から増加している場合

変更により増加した金額が記載金額として扱われます。

➁変更契約の記載金額が変更前の金額を減額させるものでる場合

変更契約は金額の記載がないものとして扱われます。

③変更契約の記載金額のみ記載され、変更金額が明らかでない場合

変更契約の金額が記載金額となります。

③の場合、変更契約に変更前契約の記載金額を書いていないことで、変更前と変更後の契約書、両方に印紙を貼る必要が出てきます。
非常にもったいないので、変更契約で、いくら記載金額が増加したのか明記しましょう。

社内教育の点

必ずしも、営業担当者に印紙額を計算させる必要はありません。
誤納が生じる可能性もあります。

よって、上記の流れを図解した簡単なフローチャートを作成し、社内イントラにアップするとか、法務Q&Aとして掲示するとか、法務お問い合わせフォームを作るなどして、ある程度は営業が自ら考えられる道を示した上で、気軽にいつでも法務に相談できるルートを確保していくことが望まれます。

最後に

以上が印紙税についてのまとめです。

ただ、上記で記載した印紙税は、ごくごく一部分に限られますし、国税庁の対応によるところもあり、必ずしも正解の対応がない世界となります。

場数を踏んで経験するしかないのかもしれませんが、その経験を糧に、アウトプット材料を増やしていきましょう。

長くなりましたが、最後までお読みいただき、ありがとうございます。
本日はこれで終了します。