基本契約と個別契約の違い【応用編】
こんばんは。
前回の記事では、基本契約とは何かというベーシックな部分を記載しました。
今回は、個別契約の方にフォーカスを当てていきます。
それでは始まり始まり
前回の記事はコチラ
個別契約って?
個別契約は、基本契約に基づく日々の受発注のことです。
この太線部分が重要。基本契約が適用される部分だからこそ、大幅に条件を省略して発注書を切ったりできるわけです。
受発注をEDI等のシステムで行うこともあるでしょうし、零細企業を委託先として抱える会社ならば、発注書をFAXで送るということもあるでしょう。
多くは製品名、型番、代金、納期と納入場所、支払期日と支払方法を示した簡易なものです。
例は以下の通り。
裏を返せば、基本契約では通常起こりうる取引だけを記載し、特定の製品にのみに適用される内容は基本契約に記載すべきではありません。
基本契約に定めるべきではないものは、覚書か個別契約で記載しましょうというのが前回のまとめでした。
ここで質問ですが、基本契約に書けない事項を覚書か個別契約のどちらで記載すべきでしょうか?
答えは、覚書です。
必ずしもそうとは限りませんが、法務経験者ならおおむね同意見かと思います。
なぜかって?
この個別契約、結構クセモノなんですよ。
発注書の例を見ると簡単そうに見えるでしょ?
でも、法務にとってはクセモノ。
理由は以下の通り
個別契約が厄介な理由①
法務が個別契約をチェックすることはできない!
法務で個別契約をチェックしている人っています?
見たことはあってもすべてチェックすることは不可能なんですよ。
一日何件も受発注があるのに、すべてチェックできますか?
というか、基本契約から外れた特約条項みたいなものが紛れているか、基本契約片手にいちいちチェックする必要があるとすれば、簡易迅速な取引のための受発注書面なんていらへんやん…というね。
発注書、受注書について契約書審査します?笑
購買部の方から殺されますよ笑
個別契約が厄介な理由➁
というより、個別契約って購買部の方や、会社によって呼称は異なると思いますが、アシスタント・デリバリーさんの仕事です。
彼・彼女らのパソコンにしかシステムが入っていないこともありますし、ウェブ発注ならアカウントもないのでできません。
物理的にアクセスできないんです。
また、仮に画面を見させてもらえても、企業間でNDAが締結されている場合、法律の専門家でもない社内法務が購買にかかわることはリスクでしかないような気がします…
個別契約が厄介な理由③
最後の理由ですが、これが一番重要な理由です。
基本契約を締結するような小売り、製造では商慣習や業界の雰囲気って死ぬほど重視されます。
ルーティンでできるだけ早く業務を行っている。
いつもの業務からの変化を死ぬほど嫌います。
あるとき、いきなり法務が個別契約にへんてこな条項を入れて発注書を切った場合(まぁ切れないと思いますが)、相手の担当者からすぐに電話がかかってくるでしょうね。
「なんやこれ?」って。
いつもと違うことをするだけで、これを通してよいのかという判断となり、事業所に法務的な知見のある方がいなければ、現場が止まる。
現場が止まれば、話が主任、課長とどんどん上の役職まで登る。
現場管理職は怖いですよ。
彼らが会社を支えているんです。我々はサポートするんです。
現場も知らない業界も知らない、現場の責任者が決めたことでもないのに首を突っ込まないのが鉄則なんです。
法務が現場に首を突っ込んでいいのは、
①下請法や独禁法等の講習をする場合
➁現場の人間が内部監査からうるさいこと言われて助けてあげるとき。
それだけでいいと思っています。
重要な場面で首を突っ込めるように、法務からややこしいこと言わずに、現場からややこしいことを言われて、それを助けてあげてください。
何気にこれ、名言じゃないか…
まとめ
というわけで、基本契約に書けないこと、特定の製品に適用するような契約条件については、個別契約で定めずに覚書で定めるべきだ!ってこと。
もちろん、場合によっては現場の責任者とも打ち合わせて、個別契約で記載することもあります。
これだけが正解じゃない。
でも、おおむねこれが正解だと思っています。
製造以外の業界のことはあまりわかりませんが、どうなんでしょう?
教えて!偉い人!
というわけで今日はここで終わります。
サヨウナラ