基本契約と個別契約の違い【基礎編】

企業法務

皆さんこんばんは。

「取引基本契約」や「売買基本契約」を締結することはありますか?
製造系や、物品を販売する会社ではまず取り交わしますが、他業界ではどうなんでしょうね?

本日は、いわゆる基本契約と個別契約について解説します。
新人法務であったころ誤解していた部分ですので、一助になれば幸いです。

基本契約ってなんだ?

製造業の場合、特定の取引先に同じ製品を継続的に発注する場合がありますよね。
たとえば、自動車産業では、同じ自動車を何年も作り続けるわけですから、必要になったらその都度、数量等を微調整して同じものを買い続ける・作らせ続けることになります。

この契約(受発注)一つ一つに契約書を取り交わすようなことはしません。
1月のX部品50個の売買契約書、2月のX部品100個の売買契約書、とか非効率なことはしないってことです。

このように、継続的な受発注関係が発生する業者間では、すべての取引に共通する事項を、「基本契約」として定めることが通常です。

例えば、「延着した場合の費用増加は甲が負担する」など、どの受発注でもこの条件にしましょう、とあらかじめ決めておくわけです。

これに対して、基本契約に基づいて日々受発注することで発生する契約を、「個別契約」といいます。
上記でいうと、1月のX部品50個の売買契約、2月のX部品100個の売買契約がそれぞれ個別契約となります。

取引基本契約は原則を定めるもの

基本契約はすべての個別契約に適用される「原則」的な契約です。

ゆえに、特定の個別契約にだけ適用する条件を定めることに不向きです。

例えば、車の様々な部品を取引する中で、ゴム部品だけは劣化しやすいので保証期間を短くしたい場合、以下のように定めると…

(瑕疵担保)
1.甲は、本製品の引渡しを受けた後、当該製品が甲乙協議によって定めた仕様に適合するか速やかに検査するものとする。
2.前項の検査で本製品に隠れた瑕疵を発見し、引渡し後12カ月以内に文書をもって乙に通知した場合、乙は、甲に対し、本製品の修補、代替物の引渡し又は不足分の引渡しによる履行の追完を請求することができるものとする。 ただし、ゴム製品(型番:XXXXX)については、この限りではない。

赤字部分、問題ですよね?

は?なんでジェネラルな基本契約に特定の製品が入ってくるの?
そもそも型番や品名、仕様が変わる場合はどうするの?
など、問題は尽きません。
(ゴム製品の保証期間は、民法・商法の原則よって、引き渡し後6カ月となるのか別途問題です)

よって、特定の製品にのみ適用されるものは、「覚書」や「個別契約」で記載すべきこととなります。

まとめ

以上のように、基本契約は取引の原則となる契約です。

ですので、新人法務に覚えてほしいことは、基本契約は極力いじらないこと
自社ひな形にしろ、先方ひな形にしろ、いじる箇所は限られています。

これをいじくりまわしたり、修正すると違和感が出るということは、取引の内容が理解できていないのか、そもそもひな形(基本契約)で締結することが適していないということです。

一度じっくり考えて、覚書か個別契約での定めを検討しましょう。
それじゃあどっちで定めればいいかって?

それは、プチ応用編までのお楽しみ!
それでは!