取引基本契約の終了とチェックポイント
こんにちは。
先日は、製造委託にまつわる取引基本契約の締結時のチェックポイントについて記載させていただきました。
契約締結時のチェックについては、皆さんが行うと思いますが、反対に契約を解除するときのことを考えて日々業務に励んでいるでしょうか?
製造系法務が案外弱いポイントとして、契約の終了に立ち会うことが少ないことをあげることができます。
そこで、本日は契約を終了させる場合のチェックポイントについてまとめたいと思います。
簡単に注意点を列挙しますので、見出しごとにポイントをご確認ください。
契約書があるか?
製造業界で法務に携わっていると、相当昔に取引開始しているにもかかわらず、契約書がないという事態に遭遇することもあるのではないでしょうか。
契約を終了させる際には、必要な手続きを確認するためにも契約書が必須です。
ですから、契約書がそもそもあるのか、また、あったとしても生きているのか必ず確認してください。
ここで契約書がないことがわかれば、取引を終わらせることを予定しているわけですから、相手方に契約書の有無を聞いてやぶへびにならないようにしましょう。
取引が続いているか
契約書の締結がある、またあったとして生きている場合は、現在取引しているのか確認しましょう。
何年も物が動いていなかった場合は、契約の解除もイージーに進むと思います。
ただし、取引が不定期だが年い1回はあるとか、こういう場合が厄介です。
代わりのメーカーを紹介するか、製品をまとめて売り切って終わりにするかという交渉になるかと思います。
製品の納期
契約を終了させたい気持ちが高まっても、まだ行動に移すのは早いです。
製品によっては、発注から納品まで期間がかかるものがあります。
保証条件によっては、年単位で取引先と繋がっておく必要があります。
よって、既発注の製品の最終納期を確認し、少なくともそれまでは契約を終了させるべきではありませんし、終わらせるにしても残った個別契約をどうするか双方で取り決めておくべきです。
ただ、この場合は、新規の発注があっても断る必要があるため、契約終了予定を隠すことは困難です。
穏便に済ませることは難しいかもしれませんが、営業担当者とタッグを組みかなり猶予期間を設定した上で解約交渉に乗り出すべきです。
委託先の規模・自社依存の割合
委託先の規模が小さい場合や、自社への取引額が、委託先における売り上げのかなりの割合を占める場合、解除が制限される可能性があります。
この場合、契約の終了までの猶予期間を長期にとること、これ以上の設備や人員投資をさせないこと、契約の解除ではなく満了と言う形で契約を終了させることが重要となってきます。
定量的な基準が示せませんが、交渉・段階を踏む・補償することが何よりも大切になってきます。
この場合は、営業だけでなく、法務部員も取引先に出向いて交渉のテーブルにつくべきです。
また、目先の契約終了に飛び付かず、ある程度の補償(手切れ金)などの交付も考えられるところです。
交渉相手
すでに営業同士で契約終了が話し合われている場合、まだ法務が出るべきではありません。
法務が出てくことで、いよいよ終了かという雰囲気になりますし、穏便な交渉が望みにくくなります。
こんなときこそ、日頃、客先と信頼をきづいている営業さんを信頼しましょう。
法務は、営業さんが困ったときにめんどくさいことを押し付けられるだけでよいのです。
逆に、相手が法務部員を臨席させている場合は、法務同士の方がスムーズに話が進むことから、打ち合わせに臨席しましょう。
終了のタイミング
契約を終了させる際、一番よいのは基本契約の自動更新拒絶期間内に、契約更新しないことを相手方に通知することです。
両当事者が締結した契約書に基づき、一番きれいに契約が終了できます。
ただ、この場合でも、個別の受発注が残っているという事態にならないように、契約終了の期間を考えて発注を止めるタイミングを図ってください。
次に、もめない終了は、合意解約です。
契約解除のほとんどが合意解除ではないでしょうか。
基本契約を締結していても、自動更新の拒絶期間がすでに経過していることがママあります。
そんなときは、合意解除に頼るしかないです。
この場合は、地道な交渉と、他製品、他社の紹介等地道な作業が続くこととなります。
最も困難な契約終了は、契約の解除です。
まぁそうですよね…
この場合にも、通常の債務不履行解除なのか、契約書記載の特別な解除事由への該当なのか、明示して示す必要があります。
解除事由については、「○○のおそれがあると判断した」など、契約の解除事由のなかでも抽象的なものを選ぶべきではありません。
客観的な事由、例えば営業を停止したとか、そういったことが望ましいです。
まぁ、そんなものはなぜ契約を終了するかの理由に左右されることになりますが…
この場合はもちろん、突発的に契約終了をする場面でしょうから、解除に加えて相殺通知を作成するなど、法務も仕事する場面がたくさんあります。
その他
よくあることですが、契約終了時に「御社の営業は○○だといったじゃないか!」と、契約終了に際する条件について、いった言わないの争いが生じることがあります。
よって、このような争いを防ぐため、取引先とは契約終了の際も覚書を必ず取り交わすこと、その際には、どこの部署の誰が担当している取引先か管理する必要があります。
管理しておけば、契約解除を相談してきた営業さんに、なにか口頭ベースで余計なことをいっていないかヒアリングできますから。
リーガルテックが進んでいる企業であればこんなことは気にしなくてもいいんですけどね……
また、最後の手段ですが、どうしても解除したくてもできない場合、いくら支出することができるかも考えておいた方がいいです。
契約を早く解除したいが、それなりの取引がある場合、少し先までの製品発注代金をまとめて支払って解除するという交渉もできますから。
これはおすすめしない最終手段ですが、解約期間が最優先の場合にはこれもあります。
ただし、相手が反社である場合には厳禁な方法となることにご留意ください。
というわけで、本日の記事は終わりです。
皆さんも契約終了させた経験を積んでいきましょう笑
以上