契約書の締結日と有効日【バックデート可能か?】

企業法務

こんばんは。

記名や押印を取り上げたので、契約書の締結手続きについて記事にしようと思っていた今日この頃。

そんな本日は、契約書に記載する日付について記載します。

契約書に出てくる日付は主に「締結日」と「有効日」の2つです。

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契約書の締結日について

契約書の締結日とは、契約を締結した日のことです。
言い換えると、申込と承諾の合致した日をいいます。

厳密に言うと、契約書を作成して日付を記入する日と、意思表示の合致日にはタイムラグがあることから、契約書末尾の日付と本当の締結日は異なりますが、一般的には契約書の末尾に記載する日が締結日とされます。
例外として、契約書末尾に日付の記載欄があるにもかかわらず、「締結日は○○年△△月□□日とする。」などの条項がある場合は、理由はともかく契約書末尾の日付と、締結日が異なることとなります。

締結日は、上記のタイムラグもあることから、企業や取引ごとに複数の解釈がなされているのが現状です。

企業間では、一方の当事者が記名押印してから、もう一方の当事者が記名押印してはじめて契約書が完成するという理由で、後に押印する企業が契約書に押印した日を締結日とすることが多いです。
また、契約の締結日をあらかじめキリのいい日、例えば一日に決めておく場合もあります。

しかし、契約書はあくまでも「契約を締結した証」にすぎません。原則通り意思表示は先に合致しているという考えから、契約締結日を「契約書作成前に実質的に意思表示が合致した日」として、あらかじめ決める場合もあります。

あまりありませんが、先に押印する当事者が押印した日とする場合もあります。
契約書で先に先方が押印して、当社が押印するときにすでに日付が記入されているとき、細かいことを気にしなくてよいのでホッとする一面もあります笑

番外編として、製造現場では、契約という概念よりも取引の実態を重視する考えの方が支配的です。よって、契約締結日をはじめての見積もり日としたり、物がはじめて動いた(製造された)日とすることもあります。

上記のように契約書の締結日は、様々な解釈があれど「意思表示の合致」の日を記載するということが基本的な考えです。
よって、バックデートは基本NGです。する場合があったとしても契約締結日の認識が相手方とズレがないように協議して決定してください。
(といいながら、バックデートしている事例も度々見受けられます…実務っていい加減でも進んでいきますよね…)

契約書の有効日について

契約書の有効日のことを、発効日という場合もありますね。

契約が効力を発生する起点となる日です。
例えば、前もって契約締結しておき、来年度から適用するとする場合、契約の有効日として2020年4月1日からとしておけばよいです。

過去に有効日を定めて、契約を過去から有効とすることもできますが、この場合は最大限の注意が必要です。

特に、NDAの締結では、締結以前の交渉段階で、協力メーカーにも話を持っていっている場合、過去から契約を有効としてしまうと、客観的には秘密情報の第三者開示になります。(まぁ、開示の例外条項で問題になることは少ないと思いますが。)

つまり、何が言いたいかというと、もうコントロールできない過去の出来事によって、契約違反があったとされかねないというリーガルリスクがあるということ。

契約の有効日を過去の日とする場合は、現場の方に詳細に確認をとり、すべての契約条項に違反するような事由がすでにないか明確にしてから設定する必要があります。

日付がなにも書かれていない場合

おそろしいことですし、レアケースですが、基本契約書に締結日も有効日も記載されていない場合があります。

客観的にも、契約が生きているのかすら判断できませんし、そもそも有効に成立したのかも怪しいです。

しかし、現場は契約条件にしたがって動いているような場合、日付がないことから直ちに契約締結がない、もしくは無効とはならないと思います。受発注書面があれば、個別契約の単位ではその都度契約締結がありますし、一応それらのもととなる基本契約っぽいものはあるということですし。

特定の期間から期間までを有効日としているにもかかわらず空白の場合はどうするんでしょうね。

私の場合は、相手方に了承をとって、日付をあとから記入してやり過ごしました。
万全の保険をかけるためには、契約を締結し直したり、別途覚書で基本契約の有効期間を定めたりするべきなんでしょうが……

正直こんな感じであとから手書き入力することも事例としてはそれなりに溢れていると思います。
ただ、その場合でも相手方と締結日や有効日の認識がずれないように、勝手に日付を記入することだけは避けるべきです。
相手方にメールで確認をとって日付を記入することで、ズレはなくなりますし、メールも証拠で残るので問題になることはまずありませんから。

まとめ

ということでまとめます。

締結日
できる限り意思表示が合致した日に則した日を記載すること。
実務では、後に記名押印する当事者が押印した日とすることが多い。
バックデートせざるを得ない場合は、相手方の認識と合わせること。

有効日
いついつからいついつまでと定めましょう。過去に遡る場合は、手間がかかりますが、契約違反がなかったことを確認してから締結しましょう。

日付がなにもない場合
相手方といつにするか確認した上で、了解をとってから日付を書き込みましょう。
確認したときのメールは証拠としてとっておきましょう。

あと、日付はどの場合でも西暦で書きましょう笑

バックデートする場合でも、日付がある場合でも契約は有効であることとなります。
企業間での取引においては、記名押印があれば日付の記載がないことで無効になることはないと思ってよいと思います。

以上で本日は終わります。
最後までありがとうございました。